QUA DESIGN style
岡山後楽園バス

岡山後楽園バス

2017年4月に新設されたJR岡山駅と日本三名園の一つ岡山後楽園(以下「後楽園」)を結ぶ直通シャトルバス『岡山後楽園バス』(以下「後楽園バス」)のバスラッピングからポスター、フライヤー、チケット、バス停、車内サインまでのトータルデザインを担当した。「あったらいいバス」「わかりやすいバス」「乗りたくなるバス」をコンセプトに、運行事業者である宇野自動車の宇野社長をはじめ職員の方達と、ネーミングの検討から1年近くかけて取り組んだ。年間80万人を超える観光客が訪れ岡山を代表する観光地である後楽園への公共交通でのアクセスの不明瞭さが指摘されていた中、岡山大学や岡山市などが連携して都市交通を考える「岡山まちとモビリティ研究会」で同区間を結ぶバス路線の提案があり、宇野社長が手を挙げられた。「わかりやすいバス」というのは県外からはもとより、近年増加している海外からの観光客にも一目でわかり、迷うことなく安心して後楽園まで案内できるバスにしたいということ。岡山市内はバス路線が充実しており、特に岡山駅は100路線近いバスが発着する。老若男女が行先を間違うことなく乗車できることを最優先に配慮する必要があった。「岡山後楽園バス」という名称も一見平凡にも聞こえるが、そのストレートさがわかりやすさにも繋がった。また路線を競合する他社のバスとの差別化を図るためにもいわゆるかっこいいバスにしてたくさんの人が「乗りたくなるバス」を目指した。同時に「美しさ」にもこだわった。それは岡山の中心部や美術館、文化施設が集積するカルチャーゾーンと呼ばれるエリアを走るバスであり、移動するものとは言え、街の景観の一部となるからだ。同時に300年以上の歴史を誇る由緒ある後楽園の情緒や美しさを表現したかった。 デザインは後楽園の日本庭園をイメージし、深みのあるグリーンを基調として統一的に展開した。特にバス車体のグリーンは宇野社長と検証を重ね、何度も業者さんに色サンプルを作ってもらい、ようやく出せた完全オリジナル色だ。バス停は四方から認識できるよう角柱にして視認性を高めると同時に、景観を乱さず街並みと調和が図れるデザインとなるよう心掛けた。また若干のプレミアム感とおもてなしの観点で車内のサインデザインも整えた。地味なところなので気づく利用者は少ないと思うが、細部にもこだわった。その甲斐あってか、素敵だからとバス目的で乗車される方、降車後写真を撮られる方や先着の競合他社バスをスルーしてわざわざ乗車される方もいたり、またとてもわかりやすくて後楽園まで迷わず来れたと喜んでくださる方もいるようだ。 今回は公共性が高く、文化歴史性がある施設を結ぶバスのデザインであるため、わかりやすさと美しさの両方が求められた。社会の中で必要とされる「デザイン」とはバランスだと思う。猪熊弦一郎は「(絵画の)美とはひっきょうコンフュージョン(混乱)とオーダー(秩序)とのバランスだ」という。機能性と造形性、社会性と作家性、大胆さと奥ゆかしさ、そして常識と反常識。それらが互いに鬩ぎ合う中で、美術的価値と経済的価値の究極のバランスを可視化することが「デザイン」という行為であり、その究極のバランスの上に生まれる「デザイン」にこそ人は魅了されるのだろう。

クライアント/宇野自動車株式会社