QUA DESIGN style
徳吉迎人

中庭のあるメゾネットタイプの賃貸住宅「徳吉迎人」のブランドマークやパンフレット、サインなどのビジュアルデザインを担当した。昨今高級車やブランドの腕時計を所有するのではなくレンタルで楽しむ、という価値観が広まっている。好き嫌いは別として、何事も上質な物に触れることは感性を磨く上ではとても大切なことだと思う。その感覚を「住まい」で体験してもらおうと計画されたのが「徳吉迎人」だ。 その名が示すように、「人を迎えるゲート」の先には中庭があり、それを囲んで各戸が配置されている。メゾネット型なので天井が高く採光も豊富で戸建てのように暮らせる。賃貸住宅ながら一つ一つ職人が手作業で丁寧に作り上げたオーダーキッチンで照明も完備されている。「永住ではなく、その後の家づくりに向けて上質な空間を体験してもらいたい。快適で良質な住まいは人生を豊かにします。」という事業主の言葉。岡山市中区徳吉という文教の気風漂う歴史ある街並みに、「感化」を与えてくれる建築が誕生した。

ブランドマークは「Apartment」の「A」をモチーフに、人を迎える「GATE(門、入口)」、漢字の「人」と「入」(人が入る)や「家」のシルエットを表現した。また上向きの矢印は関係者の向上心、アーチ状のフォルムは新しい時代(価値観)へ橋渡しをイメージしている。カラーは落ち着いた良質な暮らしを想起させるベージュ系を選択した。

建物や各部屋の表札にブランドマークのサインをあしらうことで、居住者の建物に対する愛着や誇り、円滑なコミュニケーションを促す。建物を大切に思う居住者のその気持ちが良好な住環境の構築につながり、ひいては周辺や街にも影響を及ぼすと考える。小さなことかもしれないがこうしたデザインの集積が街や景観を形成していると考えると実に重要なことである。

建築家・丹下健三は自著「建築と都市」の中で「空間の中でコミュニケーションがどのように行なわれ、どう流れるかということをかたちづけていく作業というのが、建築空間や都市空間の構造をつくることである。」と言っている。また「空間をコミュニケーションの場として考えなおさなければならない。」と続けた。つまり小さな空間で行われるコミュニケーションこそが重要であり、その集合体が建築や都市(町)を形成しているということであろう。

グローバルな目標も大切だが、一人ひとりの心が安定すれば、社会全体の安定につながるはずだ。「徳吉迎人」がそんな端緒になればと願う。

クライアント/有限会社バルプラン 企画・事業主 /有限会社バルプラン 建築設計・監理/株式会社ケンチックス 施工/株式会社SAKULAB